12月。有機ほうれん草や有機小松菜の栽培を担当する木暮は、年明け1月に出荷となるほうれん草の成長を手のひらで感じ、安堵の表情を浮かべた。グリンリーフのほうれん草は、播種をしたら最初にしっかりとたくさんの水を与える。そうすることで、病気になりやすい“4つ葉の時期”に、できるだけ水をあげなくても良い状態を作るためだ。
「“有機栽培だから”と、大目に見てもらえた時代は終わりましたね」。有機栽培という言葉もすっかり定着した昨今、商品への要求も高くなり、慣行栽培と同様の見た目も求められるようになった。「だから、夏場に行う土づくりが大切なのです」。毎年7~8月、雑草や病気を防ぐため、ロータリーで雑草をすき込んだ圃場一面をビニールで覆い、太陽の力だけで熱消毒を行という。締め切ったハウスの中、土の温度は60℃近くまで上がるのだとか。
木暮が入社した一番の理由は、このほうれん草の味に感動したことだった。37歳で東京からの転職を希望した。「それまでほうれん草を全く食べたがらなかった当時4歳の娘が、研修の時にもらったほうれん草を自らパクパクと食べるのを見て驚きました」。それまでの都会の環境を捨て、躓きながらも着実に農業人へと成長してきた木暮。“4つ葉の未熟な時期”を無事に乗り切ったほうれん草に、ねぎらいの気持ちを忘れない。
ほうれん草の状態を見るときは、とにかくその場でちぎって食べてみるのだとか。